2014年3月11日火曜日

文旦

実家には母の友達から
毎年この時期に決まって文旦が届く。

父はこの文旦が好きで、
よくむいてくれと言わたもの。

去年、父が亡くなる日の朝、
実家には未開封の文旦の箱。
夜中に弟たちには呼び出しの連絡があったけれど、
小さい子連れのうちには連絡が入らず、
朝、実家に行くと、
病院から戻った祖母にその旨を伝えられた。
すぐに弟に連絡するも、「なんとも言えん。」と。

そりゃ、かろうじて息をする人を目にしながら、
もうちょっととか大丈夫とか、
そんなことを言えない。
病院にいけば、
じいじと騒ぐ子を抱えるわたしにはなおのこと。
病院はちょっと遠く、車を飛ばしても40分。

今行こうか行こまいか迷いながら、
文旦なら食べるかもしれないと思い、
箱を開けて分厚い皮をむき、
詰まった種を取り、ジップロックに並べていたら、
弟から連絡が入った。
「慌てんと来まっし」

それで、祖母とおじとに伝え、
実家の家業のお店を閉め、
店主には電話を入れ、工房を閉め、
わたしたちは金沢の病院に向かった。

一心不乱にむいた文旦は、
疲れたようなほっとしたような皆で、
父を囲みながらつまんだ。

という、
文旦の話。
これから毎年、
高知から文旦が届くと思い出すのだろうな。

今朝、その文旦をひとつむいて食べた。
今年もまた、ぷりっとして実にうまい。

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